これだけなら、株式交換は単純なスキームのように感じますが、現実は違います。
@ 売り手側の財務内容が株価に反映する
売り手側は上場会社の子会社になるため、親会社の連結対象になります。
未公開会社の決算書が税務申告のためだけに作られていたとすれば、修正が必要になります。
修正後が赤字であったり、債務超過であると、 それが親会社の決算書に反映されてしまうのです。
実際に、保有している固定資産や有価証券を時価評価すると、大きく評価損が 発生することもあります。
棚卸資産の陳腐化、回収不能な売掛金、契約内容によっては返品調整引当金を 計上することもあります。
しかも、上場会社の場合には、M&Aに合意した時点で記者発表(プレスリリース)をします。
あとからデューデリジェンスを行って失敗したことが分かりM&Aを解消したとしても、 投資家に対する心証はよくありません。
よく調べずにM&Aの話を進める会社というレッテルを貼られてしまいます。
これを避けるためにも、事前にデューデリジェンスを行うべきです。
A スキームを使わないときよりも税金が増える
株式交換を税制上の要件を満たさないで実行すると、子会社の保有している 資産の含み益が実現してしまいます。
この実現した利益に40%もの法人税がかかるのです。
資産を売却していないのに税金がかかるということは、 税金を手元資金で支払うことになるのです。
通常は金額が大きくなるため、子会社では全額を支払えず、親会社が貸し付ける ことになります。
親会社にとっては1円も使わずに子会社を買収できたと思ったら、あとから莫大な 支出が発生することになるのです。
ここで、よく考えてください。
株式を単純に売却するM&Aであれば、売却益は発生しますが、子会社が保有する 資産の含み益は実現しません。
つまり、組織再編のスキームとは、税務上のメリットがある反面、 否認されるとデメリットが大きくなってしまうのです。
莫大な延滞税も含め、無駄な税金の支払いが増えれば、M&Aは成功できません。
さらに、要件を満たしていないのは、あくまで税務上の話です。
法律上も契約上も問題なく、株式交換は成立しています。
そのため、子会社には会計上の利益は発生せずに、税金の支払いだけが発生するのです。
親会社にとって連結上の利益は1円も上がらずに、税金という コストだけが発生することになります。
しかも、資産がビジネスに直結していれば、ずっと保有することになるため、 支払った税金は回収できません。
組織再編のスキームは株式交換だけではありません。
未公開会社同士のM&Aでよく使われるのが、会社分割、 合併、事業譲渡です。
それぞれに、税務上の要件があり、それを満たさなければ、同じように無駄な 税金が発生します。
この支払った税金が戻ってくることは、絶対にありません。
税金が否認されるのは、スキームを実行して何年もあとの 税務調査で起こることです。
そのときに、売り手側に文句を言っても、どれだけ真剣に対応してくれるのかは 分かりません。
売り手側の経済状況も大きく変わっているでしょう。
組織再編のスキームを使う場合には、デューデリジェンスによって、税務上の要件を 必ず確認してください。 |